ブブノワ《コンポジション》c1932
三代広重《上野公園内国勧業第二博覧会》1881
1922年に来日したブブノワはロシア構成主義を直接日本に伝えた貴重な存在だった。日本ではおもに版画を制作したが、その抽象的な画面構成は同時代の日本人作家にとっては大きな衝撃を与えずにはおかなかったろう。この作品は1932年『みづゑ』330号にとじ込みでも紹介されたもので、広く日本の美術愛好家にロシアの最新動向を伝えることになった。虚空に佇む二人の婦人像は不安な時代に立ち向かう人間の姿を投影しているように思える。本作は某版画館旧蔵品だが、どういう訳か1928年頃との書き込みがある。
上野公園には第2回内国勧業博覧会までにJ.コンドル設計による博物館が建てられたので、三代広重はこれを主題にして版画を制作した。興味深いのはこの建物の背後に第一回内国勧業博覧会時に立てられた美術館の建物の屋根が覗いていることである。これは木造1階建てだったので、博物館側からは見えるはずがないのにわざわざ描いているのはなぜだろうか。よほど第一回の美術館の印象が強かったのか。取り壊されていないことに注目していたのか。
コンドル設計の煉瓦造2階建ての建物も大いに日本人の眼を驚かせただろうが、版画ではそれに負けず日本初と思われる大きな噴水とそれを眺める多くの人々が描かれている。猩々が甕を背負うという日本的なデザインながら、広々とした公共の場所の噴水はまさしく新時代の象徴だった。